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京都精華大学の怪異? 文学研究者が語る「怖い話」

こんにちは。
広報グループUです。

夏のど真ん中、毎日暑いですね。
なので最近、ホラー小説を読んでみたんです。
小野不由美さんの『残穢』という小説です。
「家」にまつわる怖〜い話…、ぶるぶる震えながら読んでいたら、自宅の玄関から、カツッ…カツッ…と小さな音が響いてくるんです。飼っている猫もピンと耳をそば立てて、緊張した面持ちで向かっていくので、暑さも吹っ飛び全身に鳥肌が。
勇気を出して覗きに行くと…大きなカナブンが壁にぶつかりながら飛び回っていました。
猫もはしゃぐし、ほんと大変でした。

それはどうでもいいですが、みなさん、怖い話って好きですか?
幽霊や妖怪、未確認物体。科学的に解明できないこととして否定されがちではありますが、21世紀の今もなお、多くの人を惹きつけてやまない存在です。

2020年以降、京都精華大学にもあちこちにアマビエが出現

大学の学びとは縁遠いようなこの話題、そんなことは全くありません。
京都精華大学には、長年 幽霊や妖怪を研究してきた「怖いもの」の専門家がいるんです。

まずは、人文学科文学専攻の堤邦彦先生。『京都怪談巡礼』など、幽霊や妖怪に関する書籍を何冊も刊行している、その道の専門家です。何十年も変わらないお姿に、もしやご本人が妖怪なのでは…?と噂が囁かれるほど、自らが京都精華大学七不思議の先頭にたつ研究者です。

「霊感が全然ないんだよ~」と残念そうな堤先生

ほかにも文学専攻には、「口承文学(口頭のみで後世に伝わる伝説や物語)」を専門とする末次智先生や、中世文学の「鬼や天狗の出てくる物語や絵巻」を専門とする久留島元先生など、怖い話研究者が多数在籍しています。

「フィールドワークで怖い場所に行って写真を撮るのが実は嫌」と話す口承文学研究者の末次先生
「ウォシュレットトイレがトイレの花子さんをせん滅してしまった…」と語る中世文学研究者の久留島先生

そんな3名を集めて怖い話を語るイベントが、国際文化学部の有志の学生たちにより企画・開催されました。

7月28日の夕方18:00。しとしとと降る雨の音、ときおり雷。
放課後にも関わらず30名近い学生が集まった教室では、まるで百物語が始まるような雰囲気のなか、各先生が研究事例を紹介しつつ、「人間にとって“怖い話”とは何なのか」が語られました。

文献調査だけでなく、実地研究に足しげく通われる先生たち。
未婚の男女を冥界で結婚させる供養の風習(冥婚)があるお寺に行ったエピソードや、昔の火葬のお話など、様々な地域で見聞きされたお話の怖いこと。

とはいえ、ただ怖いだけではありません。
「幽霊画が生まれたのは、仏様や神様を驚かせて雨を降らせようとした雨乞い目的が始まり」とか、「暑い夏=怪談のイメージを定着させたのは江戸時代の歌舞伎文化」、「7月25日が"幽霊の日"と設定されているのは、文政8(1825)年7月に四ツ谷怪談の歌舞伎初演日に由来する」など、へ~!と驚く話題が次々と紹介されて、全く飽きることなく話に引き込まれていきました。

「怖い物語が生まれる背景には、人が集まる場がある」と、先生たちは言います。そして、「分からないことへの不安感」を話し合ううちに、恐怖が生み出されていく。
でも、恐怖=悪と捉えていないところが、文学の先生たちの面白いところです。何かがいるような気がする、怖いものがいる気がする…、分からないものを恐怖に変えるのは、人間ならではの「物語をつくる力」。
すごく怖がりな人、不安になりやすい人、そんな人は、もしかしたら物語を生み出す力や、読み解く力が強いのかもしれません。

地域や場所に根差す怖い話というのは、その場のみんなで代々つくりあげてきた物語の結晶なんだなと思うと、少し見え方が変わってきた気がします。

そんな興味深いお話を1時間ほど聞いた後、京都精華大学にも怖い場所があるのか、みんなで探し歩くフィールドワークが行われました。

私は、キャンパス内で怖いと思ったことはないですが、“分からないものは怖い”と思うと、京都精華大学は分からないものだらけ。

開けられない場所にある複数の扉…、こわい気がする!

いつからあるか分からないモアイ像、こわい?

一部天井の色が違う建物。こわくないけど何でかな。

あちこちに落ちている作品かどうか分からないアレコレや、不思議な建物たち。見方によっては怖くもなったり、面白くなったり、そんな“分からない”がたくさん詰まっていることが、京都精華大学の魅力だな~と、いつもと違った視点で歩きながら思いました。

怖い話があるということは、人が集まり、会話を通じて物語を生み出しているということ。怖い話に限らず、京都精華大学ならではのワクワクするような物語が、これからもたくさん誕生したらいいなと思います。

最近学内で、何か視線を感じる!と振り向いたら、よく分からないものがいました。

そんな夏の一日でした。
みなさん、夏休みも物語にたくさん触れて、楽しい時間を過ごしてくださいね~。
(『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)』という本も面白かったのでオススメです)